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国土交通省が定める空き家の定義について
掲載日:2018年08月20日
全国で空き家に関する問題が社会問題となっており、国や地方自治体ごとに様々な取り組みが行われています。
しかし「どんな物件や状態をを空き家と呼ぶのか」という空き家の定義について、実は不動産会社や国によってとらえかたが違うことをご存じでしょうか。
国土交通省がどのように空き家を定義しているのか解説します。
国土交通省の定義だと「一年以上使っていない家」
国土交通省の定める空き家に関する定義は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(2014年11月27日)の2条1項本文に準じています。
そこには「この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。」とあります。
文中に出てくる「常態」という言葉の意味についても、国土交通省の空き家に関する施策の基本方針中に定義づけされています。
内容を見てみると、「おおむね年間を通して建築物などの使用実績がないこと」としています。
使用実績の有無については、人の出入りがあるかどうかや、ガス・水道・電気などのメーターが動いているかどうかなどで判断します。
つまり、約一年以上にわたって誰も使っていない家が空き家であると定めているといえます。
この定義にそって考えると、その家の持ち主が病院や出張などで家を一年以上空けている場合も空き家になりますし、家だけではなく一年以上使われていない倉庫なども空き家と呼ぶということです。
また一年以上誰も使わなかった別荘や契約のまとまっていない賃貸物件なども空き家になります。
平成25年度に総務省統計局が行った住宅・土地統計調査によると「全国に空き家は約820万戸ある」という報告がされています。
当然、この調査では国土交通省の定義に当てはめて空き家調査が行われているので、住居以外の倉庫なども統計に含まれていることになります。
国土交通省の定義にそうと、空き家の管理状態についてはくわしい定義がされていないことが分かります。
辞書では違う意味がある「空き家」
「空き家」という単語は辞書にも掲載されています。
その意味を見てみると、「人の住んでいない家のこと」となっており、国土交通省の定める空き家の定義とはちょっと意味が違うことが分かります。
NPO法人「空家・空地管理センター」では、空き家のデメリットは年数に関係なく発生するものであることから、国土交通省の定める期間については疑問視しています。
確かに庭のある家だと、夏場は二ヶ月も放置するとかなり雑草が伸び放題になって見通しが悪くなるので防犯や防災という面では問題になりますよね。
防犯や衛生状態から空き家問題を考える場合は、「人が誰も住まない空き家状態だけど、一年未満だから大丈夫」というわけではないという点に注意が必要です。
空き家の定義を知っておくことはメリットを活用する上で重要になる
「空き家」と聞いて私たちが一般的思い浮かべるイメージと行政に定める定義には認識の違いがあることを知っておくことには、節税や空き家対策によるメリットを享受する上で必要なことです。
たとえばかつて空き家には固定資産税の仕組み上で敷地の大きさによって減額措置が取られてきました。
しかし「空家等対策の推進に関する特別措置法」の施行によって優遇措置が受けられないケースが出てきました。
さらに空き家の中でも倒壊の危険や景観を損なうなど、地域に悪影響を及ぼすと見なされた空き家になると各地方自治体から所有者に勧告が出され、放置していると土地の固定資産税が増額されてしまうこともあります。
勧告の対象となる「特定空き家」を判断するのは市区町村ですが、その判断を下すにあたり国土交通省の定義に従い各空き家を審査していくことになります。
またデメリットだけではなく、「空家等対策の推進に関する特別措置法」によって空き家を売却する場合は所得税控除などのメリットも設けられましたが、こちらの税制上の優遇措置を受けるためには国土交通省の定める空き家の定義を満たしている必要があります。
このように空き家に関する税の問題については、国土交通省の定める定義を理解しておくことが重要になります。
まとめ
国土交通省が定める空き家の定義について解説しました。
国土交通省が定める空き家とは、一年以上誰も使用していない建築物などを指します。
しかし社会問題となっている空き家問題とは、手入れのされなくなった家屋が倒壊しそうになったり防災・防火などの面で地域に悪影響を与えることを指します。
国が施行する法に基づいた空き家対策の対象は国土交通省の定める定義に即しているので、その違いを理解しておくと空き家に関する様々な制度を利用する上で有利になります。